セイバーマリオネットH
 
               「ライムの覚醒」
 
                              作:悪平 修
 
「……なぁ、ライム、チェリー、二人ともどっか故障でもしてるのか?」
『えっ!?』
 小樽の突然の質問に、ライムとチェリーは明らかに動揺していた。
「いや、俺の勘違いならいいんだけど、なんか二人とも元気がないっつーか、おとなしすぎるっつーか……」
「そうだよ、一体どうしたんだい二人とも?」
「なななななななななんでもないよ!」
「そそそそそそそそそうですわ!」
『!?』
 明らかにおかしいライムとチェリーの反応に、小樽とブラッドベリーは首を傾げるしかなかった。
 実際、二人の最近の行動は明らかにおかしかった。いつも元気いっぱいのライムがもじもじした動きを見せたり、チェリーの料理の味付けが最近失敗することがあったりと、少し二人を知っているものであれば誰でも疑問に思う行動が続いていた。
(小樽ぅ……)
 ライムは、自分がうそをついていることに罪悪感を感じていた。しかし、本当のことをうち明ける勇気がなかったのだ。
 あの日、チェリーと"特訓"をした日から、自分の体に起こった変化を、うち明ける勇気が。
(小樽様……ごめんなさい……)
 そして、それはチェリーもまた同じだった。
 
「じゃぁ、ちょっくら行ってくるけど、どっかおかしいようならすぐ言うんだぞ。」
「じゃ、あたしも出かけてくるとするよ☆」
「あ、じゃボクも……」
「ライム、おまえは今日は休んでろ。」
「えっ?でもボクも仕事が……」
「いいよ。俺から言っとくから。」
「そうだよライム、あんた最近元気ないじゃないか。」
「ライム、今日一日はゆっくり寝てるんでぃ。わかったな?」
「うぅ……」
「じゃ、チェリー、ライムをよろしくな。」
「はい、わかりましたわ。」
「じゃ、いってくるよ。」
 
ぴしゃっ。
 
「……………………………………………………………………」
 沈黙が支配する時間。それをうち破ったのはライムのぎこちない言葉だった。
「あ、じゃ、じゃぁ、ボク向こうの部屋で横になってるから。」
「そ、そうね、ゆっくりしてなさい。」
「う、うん……」
 そんな会話をする二人の頬は、すでにほんのり紅色に染まっていた。
 
ぱたん。
 
「はぁ……」
 襖をしめたライムがため息をつく。また体に「異変」が起きているのを感じたからだ。
 最近自分が変わってしまったかのような感覚を覚える。
 小樽を見ていると、なんだか気持ちが落ち着かない。それは今までにあったものとは比べものにならないレベルであった。
 しかも、最近ではチェリーにも同じような感覚を覚える。
 そんなとき、体は紅葉し、熱くなっていく。なぜか股間のあたりがむずむずする。インナーがしっとり濡れてくるのがわかる。
 そして、あの日チェリーによって"教えられた"行為をしてしまう。
「ぁ……」
 そんなことを思い出しているときに、ライムの目にタンスが入り込んでくる。
(この中に……)
 そっとあけると、そこには期待していた小樽のものではなく、チェリーの服があった。
(あれ?ここって小樽の服が入ってるんじゃ……)
 数日前にチェリーがタンスの整理をして場所が変わっていることを知らなかったライムは一瞬考え込んだが、次の瞬間嗅覚が彼女の思考を妨げた。
(あっ、この香りは……)
 チェリーの服から、ある香りが漂ってくる。それを確かめようと、ライムはチェリーの服を手に取り、抱きしめる。
(やっぱり……)
 それは、あの日、チェリーの股間から流れ出ていた液体の香りだった。
 とても甘く、とても刺激的な香り……
(……気持ちいい……)
 その香りをかいで、ライムは素直にそう思った。

 そして、その感覚をより味わおうと、ライムは行動した。
 自らの服を脱ぎ、インナーを脱ぎ去る。かすかに光る内股が、彼女の興奮を物語っていた。
 そして、チェリーの服を身にまとう。抱きしめたときより遙かに高いその一体感に、ライムの心は揺れ動く。
(チェリー……)
 自分の体とチェリーの服を密着させるように、自らを抱きしめる。
 その手は、徐々に下がっていき、チェリーの香りのしみこんだ部分からライムの香りの元を刺激し始めた。
「あっ……」
(ボク、どうしちゃったんだろ……)
 体の異変と、心の変化に、自分自身で戸惑うライム。しかし、彼女の体は悩む余裕を与えまいとするかのように加速度的に熱くなっていく。
「ふぅん……ダメ……ぁはぁ……隣にィッ……ンンッ……チェリーいるのにィ……」
 二人の香りが絡み合い、ライムの顔をかすめていく。恍惚とした表情で拒絶の言葉を発する彼女の体は、しかし確実に『感じて』いることを示していた。
 
くちゅっ……にゅ……っちゃ……ちゅくっ……
 
「ンッ……ふっ……っ……っぁあン……」
 部屋の中にはライムの目覚めた感覚を物語る粘液の音と、彼女が恥じらい押し殺すものの漏れ出すあえぎ声がこだまする。そしてそれは彼女自身の耳から進入し、彼女自身の心を愛撫する。
「きゅ……ァアッ!……はぁん……」

(も、もうライムったら……)
 ライムを興奮させるその声は、襖には防ぎきれず、隣の部屋のチェリーの耳にしっかり入っていた。ライムがいったいなにをしているのかは明白。その事実にチェリーは困惑と興奮を覚えていた。
(もう少し静かに出来ないのかしら……)
 そんなことを考えつつも、興奮は収まるどころか膨れていき、そこに興味心というドレッシングが加わる。その料理にチェリーはなすすべがない。玄関の戸締まりをした上で、そっと襖を開ける。
「ああっ!ダメ……ダメェ……も……っと……チェ……リィィ……」
(!?!?!? ラ、ライム!?)
 彼女の目に映る光景は、想像していたものとは比べものにならない現状だった。そこには、自分の服を身につけ、自分の残り香をかぎながら自分を思って自慰をする少女の姿があったのだ。
(ライム……かわいい……)
 その妖艶な姿に愛しさを覚えるチェリー。既に興奮していた彼女の体は、その魅力から離れられずにいた。
「ン……」
(だ、だめ……ライムに気づかれちゃう……)
 気持ちとは裏腹に、チェリーの手は彼女の胸と秘部に添えられていた。そしてその白魚のような指は嫌らしいダンスを始める。
「ン……ァ……ッ…くふっ……」
 必至に声を抑えようとするチェリー。
 しかし、そのしっとり湿った愛くるしい唇の間からは、熱い吐息が零れ出す。
 右手は小降りながらしっかり自己主張している胸を撫で回し、左手はその熱くなった泉の側でしみ出た愛液と戯れる。
 その間にも、襖の向こうからは愛くるしい少女の泣き声にも似た喘ぎ声が、甘酸っぱい少女の香りと、ぐちゅぐちゅという嫌らしい音と共に伝わってくる。
「こんなのだめぇ……で、でも……チェリー……」
(ああっ、ライム、私のこと想って、あんな事を……)
 まるで愛しい恋人を見ているかのように、チェリーはライムから目を離すことが出来ない。いや、離したくなくなっていた。彼女のことを見ていたい、彼女が乱れ、喘ぎ、自分を求める姿を、ただ見つめていたかった。
 それは自分自身を映し出す鏡なのかも知れない。乱れ、喘ぎ、小樽という存在を、そして同時にライムという存在を求めている自分の。
「チェッ!……リィィ……はぅっ、はぁっ、ああっ!!!」
「ぁ……ぁぁ……ィ……ライムッ!……ライムゥゥッ!!!」
 自分の世界に入っているはずの二人は、お互いの名を呼び合い、お互いのことを思って自らを慰めて、そして同時に果てたのだった。


 がらっ

「ふぃ〜、いま帰ったぜぇ。二人とも、体の調子はああっっっ!?!?!?」
 夕方、早めに帰宅した小樽が目にしたものは、横たわり、股間に手を当て、なにやらぬるぬるした液体を服の上から塗りたくった姿勢で気を失っているチェリーと、何故かチェリーの服を身にまとい、同じように股間を光らせ失神しているライムだった。



「……という訳なんスよ、ライムたち、一体どうしちまったんでしょう?」
 ライムたちの "異常な行動" を目の当たりにした小樽は、ブラッドベリーに二人を担がせ、取る物もとらずにローレライに相談を持ちかけていた。それは純粋に、ライムたちが故障してしまったのではないかという心配心だった。女性のいないこの星では、彼の反応はある意味当然とも言えよう。
「ええ……………。」
 しかし、ローレライにはライムたちの行動が何を意味する物なのか分かっていた。ライムたちのデータからも、小樽の話からも、そして二人の少女の霰もない姿からも。
「…………………。」
 ブラッドベリーも勿論何が起こったのか大体の予想は付いていた。
「俺ぁ、一体どうすれば……」
 困惑する小樽に優しく語りかけるローレライ。
「小樽、ライムたちは別に壊れちゃったわけじゃないのよ。だけど、このままでは彼女たちの "感情" は狂ってしまう。」
「えっ………!?」
「いい?これから聞くことは、まじめに聞いているから、ちゃんと答えてね。」
「は、はい。」
 こほん、と咳払いをすると、少し顔を赤らめたローレライは小樽に質問をぶつけた。
「ライムたちを抱いてあげたことはあるの?」
「えっ?
 ……そりゃぁまぁ、あいつらが調子の悪いときなんかは抱き上げてやったことも……」
「そ、そうじゃなくて、その……
 ふ、夫婦の営みを……」
「チェリーは毎日飯を作ってくれるし、ライムも手伝っているみたいだけど……」
「いや、そういう事じゃなくて……」
「………だぁ〜〜〜〜〜っ!!!いらいらするねぇ!
 いいかい小樽、ローレライは、セックスしたことは無いのか、って聞いてるんだよ!
 ある訳ないよな!あぁ、ある訳ない!!」
『………………………。』
 ブラッドベリーの一言でようやく意志の疎通がとれた二人。
「た、確かにそういうことはしてねぇけど……」
「小樽、あなたの気持ちも分かるわ。でもね、女の子って、自分じゃどうしようもなく、好きになってしまうこともあるの。
 勿論、抱かれることが全てじゃない。笑顔で会話したり、手をつないで散歩したり、ただ一緒にいるだけで満たされることだってあるわ。
 でも、どうしようもなく、躰が、好きな人を求めてしまうこともあるのよ。」
「…………………………………。」
「ライムは元々知識が少なかった。だけど、体の成長が、心の成長を追い抜いてしまったのね。自分でも分からない感情に悩まされて、混乱しているの。
 チェリーはそういう知識も持っていたはずよ。でも、彼女なりの道徳観のような物に苛まれたのかもしれないわね。
 とにかく二人とも、望んでいない形でしか自分の性欲を満たすことが出来なかった、その心の食い違いがストレスになって、今回のようなことが起きてしまったんでしょう。」
 ローレライはあくまで二人を人間として表現した。
 勿論、プログラムの書き換えやデータの消去で解決できないわけではない。しかし、それは小樽のためにも、ライムたちのためにも良いことではないと判断したのだ。
「それじゃ、一体どうすれば……」
「……ライムたちを、抱いてあげて。」
「……えっ?」
「あなたがライムたちを抱いてあげれば、彼女たちの心の葛藤は収まるはずよ。」
「で、でも……」
「今のままじゃ、いつかライム達は死んでしまうわ。」
「いいっ!?」
「乙女回路に相当の負担がかかっているの。乙女回路に支障を来したら……どういう意味か、分かるわよね?」
「……………………。」
 小樽は悩んでいた。勿論彼女たちの力になってやりたいし、小樽も男だ、そういう行為が嫌いなわけがない。しかし、道徳心が彼を惑わせているのも事実だ。とはいえそれはこの期に及んでは良いわけでしかない。
「あ、あの……」
「お願い小樽、彼女たちを救ってあげて。」
「い、いや、そりゃぁ俺だってあいつらの力になってやりたいんスけど……」
「だったら!」
「イヤ実は……」
 小樽は腹をくくった。本当のことを、ローレライに話すしかないと考えたのだ。
「俺、仕方がよく分からねぇんでぇ……その……」
『……………?』
 思わず目を見合わせるローレライとブラッドベリー。そして。
「……ぷっ、ふっ、ふふふふっっ!」
「……はっ、はぁっはっはっはぁっ、こりゃぁ参った!なるほどそうか!そうだったのかぁ!」
「ふ、二人とも……そんなに笑わなくても……」
「クスクス……ご、ごめんなさい……」
「や、やだよぉ小樽ぅ、そんなことでそんなに深刻にぃ……」
「俺にとっては大問題なんだよ!」
「っ……。……ご、ごめん……」
 思わず叫んでしまった小樽にばつが悪そうなブラッドベリー。しかし、そんな小樽を、子供をあやすかのような目で、ローレライは見つめていた。
「いいわ、私が教えてあげるから。」
『ええっ!?』
「勿論ブラッドベリーにも手伝って貰うわよ☆」
『えええっっっ!?!?』
「いいこと?これは遊びじゃないの。ライムたちのためなのよ。」
『で、でも……』
「もう、ぐずぐず言わないの!」
 戸惑う二人を引きずりながら寝室に消えたローレライ。
 彼女が二人に何を教えたのか、それは今は秘密である。



「……いい?さっき私が教えたように、ライムたちを愛してあげるの。
 大丈夫、小樽ならきっと出来るわ。」
「は、はぁ……」
「彼女たちはいまメンテナンスルームにいるわ。もう意識は回復しているはずだから……」
「すいません、何から何まで……」
「じゃ、行ってらっしゃい☆」

ちゅっ☆

「えっ……」
「フフッ……」

プシューッ

「ローレライ……」
 小樽に行ってらっしゃいのキスをして部屋に入ったローレライの笑顔は、ライムのような無邪気さを持ちながら、どこか小悪魔のようだった。





……ども、悪平です。
夏コミ作品ばっかりじゃどうしようもないのでwebも徐々に。

ローレライ、小樽、ブラベリ姉さんの3P(爆)は、あとで加筆予定ですが、今はとりあえずこれで。
せめて週に1度は更新したいですね……スレのほうも書きたいですし。

L:ならとっとと書かんかいぃぃぃっっっっっっっっ!!!

どっから出てきたんだおまえわぁぁぁぁ   (きらりーん)

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