一式九郎(いっしきくろう)様作品:「小さな幸せ」


           小さな^2幸せ

 

                   @

「ふう・・・」

フィリアはペンを置いて溜息をついた。気がつけばもう夜更けもいい所で、薄暗い部屋

の中で随分と縮んだ蝋燭が彼女と店の帳簿を照らしている。

リナ達とわかれた後、フィリアは小さなアンティークショップ・・・・というか骨董品

屋を自営して生計を立てていた。業種がらか儲かっているとはお世辞にも言えないが、だ

からといって生活に困ることもない程度の収入は得ている。

フィリアは物憂げに書類を閉じて机に伏せた。

もともと今時間に追われてしなくてはいけないような内容のものでもないが、一人だと

つい時間を忘れて無理をしてしまいがちだ。

「ふうう・・・」

彼女はもう一度大きく溜息をつき、横目で机の端にある小さなゆりかごを見やった。そこには人のこぶし大の水晶玉がうっすらと光を放っている。

「ヴァル・・・・・・」

フィリアは愛しそうに見つめながら一言、その名を呟く。

それはダークスターが滅びた後に唯一残ったものだった。彼女はこれがヴァルガーブで

あると信じている。いや、むしろ見た瞬間から直感的にそれを悟っていた。

いつか甦るのか、なにか特別な処方が必要なのか、実は待てど暮らせど変化などないの

か、全くわからないが。

<何か情報があればリナさん達が持ってきてくれるでしょうし、私はその時がくることに

備えて生活の基盤を整えないとね>

水晶を眺めつつそんなことを考えていると、ちょっぴり幸せな気分になってくる。

<あの時の話の続き、もう一度しっかりしなくっちゃ。もうブラックドラゴンは彼だけ、ゴールドドラゴンは私だけ。将来のことも考えないと・・・そう、ふたりの将来も、ね>フィリアは自分とヴァルガーブを典型的幸せな家庭にあてはめ、ニヤつきながら赤面した。

<ふたりでお店を経営して、でも彼に接客なんて出来るかしら?いっしょに私の手料理を食べて。たまにはお店を休みにしてふたりで出かけて。それで、それで、夜も・・・いっしょに・・・・・・>

「・・・・・はあ・・・」

うっとりとした表情で吐きだした三度目の溜息は、先ほどまでとは違う熱をもっていた。

A

フィリアは割と冷静に周囲の戸が開いていないか目を向けた後、服の上からそっと胸に手を当てた。それだけでも、すでに先端の隆起が硬くなりつつあるのが分かる。

「・・・ん」

いきなりつかんだりせず、優しく下からなであげるように触れる。

「はああ・・・・・」

淡い快感と切なさで熱い吐息がもれる。

<一人で、こんな・・・・だ、め・・>

理性ではそう考えても、体の熱までは思うようにはいかない。フィリアは後ろめたさと快感のジレンマに美しい眉を寄せる。

<どうして?・・がまん、できない・・・>

心の隅でささやかな自制心が呟く。

「んん・・・ふ、はああ」

控えめになでるような動きをしていた両手のひらが、呼吸が浅く速くなっていくのにあわせて徐々に揉みしだくような動きに変わる。先端を手のひらで押さえつつ、ゆっくりと円を描くように。

豊満な乳房が手の動きに合わせて大きく形を変えていく。

「ふう、ん・・・はう・・・・あふ」

薄く開かれた唇から時折うめくような喘ぎが洩れる。

声を押し殺そうとしてそれでも洩れてしまう喘ぎ声に赤面し、その羞恥がまた新たな快感を掘り起こす、羞恥と快楽の永久ループ。

フィリアは左手でスカートのホックを外し、そのまま手をスカート中にゆっくりと滑りこませ、下着の上からそっと秘唇に中指を押しあてた。

「んうっ!」

フィリアは一段階上の刺激に椅子の上で仰け反り、自分の右人差し指に歯を立てて声を堪える。そんなそぶりのフィリアとはまるで関係のない生き物のように、左手はゆっくりと秘唇を縦になぞる。

「ん、んう・・ふ・・・あん・・・く・・・・ふううん」

くぐもった喘ぎが、湿った指の音とともに静かに、断続的に薄暗い室内に響く。肌がじっとりと汗ばみ、もっと強い刺激を求める様に全身が脈うっている。

このままでは満足出来ないことはわかり切っているのに、最後の自制心がこれ以上進むことを拒んでいる。かといって今更やめることも出来ない。

決して低くはない所で理性と本能の板挟みに合い、妖しくあえぎ悶える。

「ん・・・ああ、あはうっ・・・・ふあ、や、ああん・・・」

抑えた自慰に身悶えするフィリアのその視界の隅に、ふと例の水晶が入った。

変わることなく薄く輝くそれにヴァルガーブの視線を錯覚し、彼女の背筋に寒気にも似た鋭く甘美な感覚が走る。

<ヴァルに・・・・見られてる・・・>

そう意識した瞬間、フィリアを苦しめる最後の理性が決壊した。

二本の指が下着の脇から蜜に濡れた秘唇を割って入り、襞を直接擦りあげる。

「あっ、や・・ああん!あはあ・・あん」

 今までを数段上回る刺激にフィリアは仰け反り腰を浮かせる。

「やああ、ん。見ちゃ・・や・・・・見ないでえ」

見られているという意識がフィリアの口から言葉を漏らす。右手が乳房の上で円を描き、親指と人差し指が先端をつまんで捻る。

「んっ、はあ、やあん・・・だめえっ・・ふうんん」

左手が秘唇の合間から膨らんだピンクの蕾を探り出し、それを包皮の上から擦りあげた。

「ひっ、あああっ・・ふあっ」

 もっとも敏感な部分に与えられる刺激に、フィリアは堪えきれず悲鳴にも似た声を上げた。しかし指はその動きを鈍らせることなく執拗に蕾を責める。

「はんっ、ああ・・・だめえ、こんなっ・・・・こんなああ・・」

身体は今にも達しそうなまでに高まり、視線は熱と快楽に浮かされ朦朧と宙をさまよう。

その視線がヴァルと合った。

B

今までの艶姿もどこへやら。フィリアは「食べ物を目の当たりにしたリナ」も真っ青の勢いで机にとびついて水晶を、厳密にはそのすぐ上を見つめた。

そこには全長30センチほどの2.5頭身の、しかし紛れもなくヴァルガーブが困った顔で足を組んで座っていた。

フィリアはそれをじっと凝視したあとおもむろに掴もうとした。しかし指はヴァルガーブに触れることなくすり抜ける。

「ヴァル・・・・」

フィリアは感極まった声でそれを呼んだ。

「そう言う台詞は掴もうとする前に言うもんじゃねえか?」

「そ、そう?」

返事の代わりに厳しいツッコミ。フィリアは苦笑を浮かべる。

「でも、どうして?きゅうに・・・いままでなにも・・・・・」

「んなことオレにもわかんねーよ。ただ気が付いたら、なんだ、お前が・・その・・・」

 言いよどむヴァルに赤面するフィリア。

「じゃ、もしかして初めからから、ずっと?」

「あ、ああ。見えてた」

 プチン。

妙な擬音とともにフィリアが卒倒した。あまりの恥ずかしさに気を失ったようだ。

「お、おい。大丈夫か?」

ヴァルは心配して様子を見ようとするが、困ったことに水晶球の上からは移動できない。

「む、クソ!水晶からは離れられねーのか。ち!おい!大丈夫か?!返事しろよオイ!」

フィリアは朝まで目を覚ますことはなかった。

続くかも・・・

 

 

 

作者のコメント:

一式九郎です。はじめまして。

小説の類を書くのは初めてなので大変尻切れトンボな物が出来てしまったと痛感してます。

いや、難しいですね創作活動って。

面倒でなければ感想や指摘などお待ちしておりますので、思う所あったらメールなど下さい。

読んで下さってありがとうございました。




<以下、悪平コメント>


作:と言うわけで、久しぶりの更新は、一式九郎(いっしきくろう)さんの「小さな幸せ」です。

L:ほんっっっとうに久しぶりねぇ。

作:最近いろいろあってねぇ。

L:うそつけ暇人。

作:暇人て。
  これでも本当に忙しかったんだよぉ……

L:例えば?

作:毎年恒例の「年末パソコン大暴走会」とか……

L:ヤなイベントねぇ

作:うみゅ。
  何か知らないけど、秋から冬にかけての時期、
  毎年のようにパソコンがおかしくなるんだよねぇ……

L:やっぱり日頃の行い?

作:……ぁぅ。

(久しぶりに何事もなく幕が降りる。終。)


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